反転した世界から



わたしは30を過ぎたらきっと死ぬのだと思っていた。
苦しいのは今だけだ、じきに30になり、身も心もすっかり楽になると…
そう思っていた。
死が自分を救ってくれるのだと思っていた。

平凡で幼稚で逃避的な考え方だと、どこか醒めた調子で思っていたけれど、
それでも30を越えて生き続けている自分をどうしても想像することが出来なかった。

端から見れば悲観主義的ともとれるだろうし、死の予感に縋って生きているというのは実際、前向きとは言えないだろう。

しかし、どうだ。
今わたしはその予定の時を越えて、生きている。
そして、不思議なことにわたしを支え続けてきた明るい死の予感は、やはり本当だった。


30を数年越えたところでわたしは突然死に、生まれ、生き始めた。

なんという皮肉だろう。
死の予感は、実はわたしの闇、病、悲しみ、憎しみ、苦しみからの視点だった。

わたしはそこからようやく、生まれた。
わたしの人生はようやく、始まった。

病に憑りつかれていたわたしは、自分の人生を始めることさえ出来ていなかったというのに、
一体、それは迎え入れるべき祝福の死と生誕の物語だったのだ。

突然に私の中の闇は光に満ち、病は癒され、悲しみは贖われ、憎しみは葬られ、苦しみは消え去った。
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by osorahahitotu | 2011-11-21 23:53
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